家でできるトレーニング:心身のコンディショニングを学ぼう

今般のstay home政策は、新型コロナウイルスの感染リスクを最小限に抑える方策として有効である一方、これが長期に及ぶと、身体活動量の慢性的な低下によって心身に悪影響が生じるリスクを高めることも間違いないといえます。私たちの身体は活動量の少ない生活習慣にも確実に適応(悪い適応、maladaptation)し、それが様々な生活習慣病や精神的疾患につながるリスクを高めます。その意味で私たちは今、新型コロナウイルスの感染リスクと共に、stay homeの極端な活動量低下によって心身の不調に陥るリスクにもさらされているのではないでしょうか。屋外でジョギングやウォーキングする人たちがかなり増えている現状をみると、このような認識は広く共有されていると思われます。一方で、在宅でどのような運動をしたら良いかわからない、との声が私たちのもとに寄せられたことから、まずは、東京大学に入学早々、在宅での学習を余儀なくされ、未だキャンパスでの授業を受けることができずにいる学生向けに、自宅でできるエクササイズを研究室のホームページから発信して紹介しようということになりました。研究室メンバーが協力して、1週間で作成してくれました。既に世に出ている優れた動画に比べて、きわめて素朴で決して洗練されたものではありませんが、それで良いので手作りで作って欲しいと大学院生にお願いしてできたものです。既に公開されていて、私たちが知っている優れた動画も紹介していますので、ぜひ東京大学の学生だけでなく、このサイトを見ている人たちに活用していただき、心身の不調から身を守っていただくことを願っています。

在宅でのエクササイズの考え方

まずは活動量、すなわちエネルギー消費を増やしましょう。運動としては有酸素運動を取り入れましょう。有酸素運動とは、比較的長く、その強さなら30分ぐらいは続けられると感じられる運動です。在宅でも、紹介している「その場足踏み」、「ランジ」、「連続スクワット」などを、例えば足を上げる高さ(その場足踏み)足を踏み出す幅(ランジ)、おしりを下げる高さ(連続スクワット)を適宜調節して、自分が楽なペースで、しかし長く続けられれば、立派な有酸素運動になります。その際、脈拍がわかればさらに良い目安になるでしょう。1分間に100拍以上ぐらいになっていれば、そこそこの負荷がかかっているといえます。後はどのぐらいできるかですが、TVでもみながら気楽にやってみてはどうでしょうか。15分ぐらい続けられると良いのではないかと思います。これを5分ずつ3回に分けても、一度に行ってもいいでしょう。30分ぐらい続ければ脂肪燃焼も期待できるようですが、そこまでできなくても良しとしたいところです。その場でつまらない運動を30分も続けるにはかなりの忍耐が必要になり毎日は続かないと思えるからです。15分も実施すればおそらく軽く汗ばむぐらいになると思います。それで良しとしましょう。

筋力トレーニング

前記した有酸素運動を私は優先順位一位にします。ここからは余裕がある人向けです。在宅でも自分の体重を負荷とする筋力トレーニングは様々あるので、これを取り入れると更にベターです。これも無理なく、しかしできれば毎日、できなければ週に数回やってみましょう。一日のメニューは自分で好きなように決めます。ただし、上肢と体幹、下肢をそれぞれ1種目以上取り入れてできれば満遍なく鍛えられるので、すばらしいです。筋力アップしたいならば最低週に3回程度、一回当たりの強さも強めでやってみてください。

ストレッチング

動かないでいると、身体の柔軟性も落ちていきます。ゆっくりリラックスして筋肉をストレッチングすることで、柔軟性を高めるだけでなく、リラクゼーション効果もありますので、これもお勧めです。在宅で一人で行うので、ゆっくり伸ばしてその姿勢を数十秒間維持する静的ストレッチングがお勧めです。痛くない範囲で、呼吸が普通にできることを意識して、長め(20秒以上程度)にやってみてください。

予防トレーニング

私の研究室にはリハビリテーションの専門家(理学療法士)の資格やトレーナー経験がある大学院生が何名もいるので、彼ら彼女らお勧めの動画や、私の研究室OBが在籍する通所リハ施設の方たちが作成した動画も紹介しています。これらもぜひ活用してみてください。

以上、長くなりましたが、東京大学では体育の授業が必修です。それは、自らの心身の状態を最適に維持する技術を習得することが、卒業後、社会に出て活躍するうえで必須との認識があるからです。この状況は、自らの心身を良好な状態に保つ技術を身につけるためにはうってつけの状況といえるかもしれません。この機会にぜひ実践してみてください。